1. はじめに
2. 今日のお寺
〜静けさの中で「生き方」を見つめる禅の大本山〜
永平寺

おすすめ時期:5月〜6月ごろの新緑、11月ごろの紅葉シーズン
永平寺は四季それぞれに美しいが、あひる如来としては新緑と紅葉の季節がおすすめじゃ。
春から初夏には木々の緑と苔がみずみずしく輝き、秋になると山内が赤や黄色に染まってゆく。雪深い土地なので、冬にはまた別世界のような静かな風景を見ることもできるぞ。
2-1. あひる如来から一言

永平寺を歩いておると、不思議なことに気づく。
「何かものすごいものを見た!」というより、だんだん自分の心が静かになっていくのじゃ。
長い回廊を歩く。
階段を上る。
木々の音を聞く。
修行僧が歩いてゆく。

ただそれだけなのに、普段頭の中をぐるぐる回っている仕事や予定や悩みが、少し遠くへ行く。
禅というものは、何か特別な思想を頭に詰め込むことではないのかもしれん。
「今やっていることを、きちんとやる」
永平寺を歩いていると、そんな単純で難しいことを教えてもらえる気がするのう。
2-2. あひる如来の永平寺解説
さて、ここからは少し詳しく永平寺について見ていこう。
永平寺は福井県吉田郡永平寺町にある、曹洞宗の大本山じゃ。横浜市鶴見区にある總持寺(そうじじ)と並び、日本の曹洞宗を代表する寺院となっておる。
山号は吉祥山(きちじょうざん)。

開山は、日本の禅の歴史を語るうえで欠かすことのできない道元禅師じゃ。
道元は若くして出家し、比叡山などで仏教を学んだ。しかし学べば学ぶほど、ひとつの大きな疑問を抱くようになった。
やがて道元は宋の中国へ渡り、天童山で如浄禅師と出会う。そして、ただひたすら坐禅する「只管打坐(しかんたざ)」の禅を深く学んだ。
日本へ戻った道元は京都で教えを広め、のちに越前へ移る。

そして1244年、現在の永平寺につながる「傘松峰大佛寺(さんしょうほうだいぶつじ)」を建立した。
その2年後の1246年、寺の名は「吉祥山永平寺」へと改められる。
「永平」という名前は、中国に仏教が伝来したとされる後漢の明帝の時代の元号「永平」にちなむとされ、その言葉には「永久の和平」という意味が込められているのじゃ。
なんとも美しい名前ではないか。

永平寺の大きな特徴は、ここが現在も修行道場として機能していることじゃ。
境内には大小70余りの建物があり、その中心となるのが禅宗寺院の「七堂伽藍(しちどうがらん)」。
永平寺では、山門・仏殿・法堂・僧堂・大庫院・浴室・東司という七つの建物が修行生活の中心を構成しておる。
ここが面白いところじゃ。
仏殿や法堂だけなら「お寺らしい」のう。しかし、七堂伽藍には台所である大庫院、お風呂である浴室、そして東司と呼ばれるお手洗いまで含まれている。

「えっ、トイレまで修行なのか?」と思うじゃろう。
そうなのじゃ。
禅では、坐禅している時間だけが修行なのではない。
食べること。
眠ること。
掃除すること。
身体を洗うこと。
料理をすること。
日常生活のひとつひとつを丁寧に行う。その姿勢そのものが仏道の実践と考えられておる。
永平寺の建物を見ていると、禅というものが「特別な時間のための宗教」ではなく、毎日の暮らしそのものを整えていく教えなのだと分かってくるのう。

そして七堂伽藍をはじめとする主要な建物は、長い屋根付きの回廊で結ばれている。
山の斜面に建てられているため、回廊には長い階段もある。これを一段、一段と上ってゆく。
急いで歩けば、ただの階段じゃ。
しかし足の裏や呼吸を感じながら歩けば、それだけでも少し坐禅に似てくる。
ふむふむ。永平寺では「歩くこと」まで修行になりそうじゃな。

そして、ぜひ見てほしいのが傘松閣(さんしょうかく)じゃ。
2階には156畳敷きの大広間があり、その天井には花や鳥などを描いた230枚の彩色画が並んでいる。
川合玉堂や伊東深水などを含む多くの画家によって描かれたもので、質素で静かな禅寺の中に突然現れる華やかな空間に驚く人も多いじゃろう。
さらに山門は1749年に建てられたもので、たび重なる火災をくぐり抜けた、現在の永平寺では最も古い伽藍とされている。

そして忘れてはいけないのが承陽殿(じょうようでん)。
ここは道元禅師を祀る、いわば永平寺における特に重要な場所じゃ。
観光地として永平寺を訪れるのももちろんよい。
しかし、少しだけ立ち止まって考えてみてほしい。
道元が求め続けたのは、「どうすれば立派な人間に見えるか」ではない。

目の前の一瞬を、どう生きるか。
坐るときは坐る。
食べるときは食べる。
掃除するときは掃除する。
現代のあひるたちは、ご飯を食べながらスマホを見て、歩きながら仕事のことを考え、お風呂に入りながら明日の心配をしてしまう。
身体はここにあるのに、心はいつも別の場所じゃ。

永平寺を歩く時間くらい、スマホをしまってみてもよいかもしれんぞ。
「今、ここにいる」
それだけで、いつもの景色が少し違って見えてくるかもしれんのう。
2-3. 永平寺の歴史
永平寺の歴史は、鎌倉時代の1243年、道元禅師が京都を離れて越前へ向かったところから大きく動き始める。
道元を越前へ招いたのが、道元に帰依していた武士波多野義重(はたのよししげ)じゃ。
道元はまず吉峰寺で冬を過ごし、1244年に傘松峰大佛寺を建立。1246年に「吉祥山永平寺」と改称した。
道元の没後は、二世の孤雲懐奘、三世の徹通義介らによって伽藍や修行道場としての体制が整えられていった。
しかし、その歩みは決して平坦ではなかった。

1340年には兵火によって伽藍が焼失し、さらに応仁の乱のさなかである1473年にも焼失。その後も火災に見舞われたため、現在残る建物は近世以降に建てられたものとなっている。
それでも永平寺は再興され、皇室からも重んじられた。
1372年には後円融天皇から「日本曹洞第一道場」の勅額などを受け、1615年には徳川幕府の法度によって總持寺と並ぶ曹洞宗の大本山として位置づけられていく。
火災や衰退を経験しても、また建て直す。
人が去っても、次の人が受け継ぐ。
そうして800年近く続いてきた。
永平寺の歴史を見ていると、伝統とは「昔のものをそのまま保存すること」ではなく、壊れても、また次の世代がつなぎ直していくことなのかもしれんと思えてくるのう。
2-4. 永平寺の見どころ
① 山門
1749年建立。永平寺に現存する伽藍の中では最古とされる建物じゃ。重厚な二層の門で、禅の修行道場らしい威厳を感じられるぞ。
② 仏殿
七堂伽藍の中心となる建物。釈迦如来を中心とする三世仏が祀られておる。華やかさよりも、静かに仏さまと向き合う空気を感じてほしい場所じゃ。
③ 法堂(はっとう)
山内でも大きな建物のひとつで、1843年の建築。聖観音像が安置されておる。高い場所にあるので、回廊の階段を上った先に広がる景色も味わってほしいのう。
④ 僧堂
修行僧にとって非常に重要な場所。坐禅だけではなく、食事や就寝などにも関わる生活と修行の中心じゃ。永平寺が「観光寺院」ではなく、今も生きた修行道場であることを感じられる場所じゃな。
⑤ 大庫院
永平寺の台所や事務を担う建物。禅では料理も立派な修行じゃ。1930年に建てられた大きな木造建築で、古いエレベーターが現存していることでも知られておる。
⑥ 承陽殿
道元禅師を祀る重要な場所。「永平寺を開いた人のお墓があるところ」くらいに考えず、今日まで続く永平寺の原点に手を合わせる気持ちで訪れたいのう。
⑦ 傘松閣・絵天井の間
永平寺でも特に人気の高い場所。156畳の大広間の天井を230枚の美しい日本画が埋め尽くしておる。上ばかり見て首が痛くならんようにな。
⑧ 回廊
あひる如来は、実はここも大好きじゃ。主要な建物が屋根付きの回廊で結ばれているので、雨の日でも参拝しやすい。階段が多いため、歩きやすい靴がおすすめじゃぞ。
2-5. あひる如来の永平寺案内
初めて訪れるなら、最低でも1時間ほどは見ておこう。
公式案内でも、ゆっくり一巡する場合は「だいたい1時間弱」が目安とされておるが、あひる如来としては、せっかくここまで来たなら1時間〜1時間半ほど確保しておきたいところじゃ。
吉祥閣から入り、傘松閣の絵天井を見て、回廊を進みながら山門、仏殿、法堂、承陽殿などを巡っていく。
そして、永平寺では建物だけを見るのではなく、ぜひ修行僧たちの所作にも静かに目を向けてみてほしい。
歩く。
掃除する。
合掌する。
一つ一つの動きが丁寧じゃ。

もちろん修行中なので、じろじろ観察したり、邪魔をしたりしてはいかんぞ。
「なるほど。丁寧に生きるとは、こういうことなのかもしれんな」
そんな気持ちで、そっと見守るくらいがちょうどよい。
さらに禅の世界へ一歩踏み込みたい人には、一般参拝者向けの坐禅体験もある。
観光で終わらせず、自分自身で坐ってみると、永平寺の見え方がまた変わってくるぞ。
2-6. 永平寺の御朱印
御朱印は吉祥閣1階の御朱印処でいただくことができる。
あらかじめ紙に書かれたものと、御朱印帳へ直接揮毫していただくものの2種類が用意されている。
御朱印帳への揮毫を希望する場合は、参拝を始める前に申し込んでおくのがおすすめじゃ。参拝を終えて戻ってきた際に受け取ることができる。
御朱印は旅のスタンプではなく、本来は参拝した証じゃ。
まず仏さまや祖師さまへ手を合わせ、そのご縁の証としてありがたくいただこうのう。
2-7. あひる如来のワンポイント
永平寺で覚えて帰ってほしい言葉をひとつ。
「只管打坐(しかんたざ)」
難しそうに聞こえるが、簡単にいえば「ただ、ひたすら坐る」ということじゃ。
何かを手に入れるために坐るのではない。
成功するためでも、悟った人間に見せるためでもない。
ただ坐る。

現代風に言えば、仕事をするときは仕事をする。
ご飯を食べるときは、ご飯を食べる。
人と話すときは、その人と話す。
簡単そうじゃろう?
ところがこれが、なかなか難しい。
永平寺を出たあと、まず一回だけでも「今やっていることだけをやる時間」を作ってみるとよいぞ。
3. 永平寺の詳細情報
3-1. お寺の名前
永平寺(えいへいじ)
正式名称:吉祥山 永平寺(きちじょうざん えいへいじ)
一般には「大本山永平寺」と呼ばれているぞ。
3-2. 永平寺の宗派
曹洞宗
横浜市鶴見区の總持寺と並ぶ曹洞宗の大本山じゃ。
3-3. 永平寺を創建した人や教祖
開山:道元禅師
開基:波多野義重
道元禅師が1244年に傘松峰大佛寺を建立したことを永平寺の開創とし、1246年に吉祥山永平寺と改称された。
3-4. 永平寺のご本尊
釈迦如来・弥勒仏・阿弥陀如来の三世仏
過去・現在・未来へと続く仏の世界を表しておる。
3-5. 永平寺の住所
〒910-1228
福井県吉田郡永平寺町志比5-15
Googleマップはここに手動で埋め込んでおくれ。
3-6. 永平寺のアクセスと最寄駅
JR福井駅から
便利なのは、福井駅から京福バスの「特急 永平寺ライナー」を利用する方法じゃ。
福井駅から永平寺門前まで約30分。
えちぜん鉄道を利用する場合
えちぜん鉄道勝山永平寺線「永平寺口駅」で下車し、京福バス「永平寺門前行」または「永平寺行」に乗り換える。
バス乗車時間は約13分。終点から永平寺までは徒歩約5分じゃ。
車の場合
中部縦貫自動車道「永平寺参道IC」から約5km、車で約10分。
駐車場
永平寺半杓橋のすぐ近くに本山コインパーキングがある。
境内は山の斜面にあり階段が多いため、歩きやすい靴で行くのがおすすめじゃ。
3-7. 永平寺の営業時間
開門:8:30
閉門:16:30
公式サイトでは16:00までに来寺するよう案内されている。
受付時間は季節や行事などによって変更される場合があるので、遠方から訪れる場合は当日の公式情報も確認しておくと安心じゃ。
3-8. 永平寺の料金(拝観料など)
大人:700円
小学生・中学生:300円
未就学児:無料
障がい者手帳を提示する方:300円
坐禅体験などについては、別途志納が必要となる場合があるぞ。
クレジットカード:
拝観料については、公式サイト上でクレジットカード利用可否の明確な案内を確認できなかったため、必要な場合は事前に永平寺へ確認するのが確実じゃ。念のため現金を用意しておくと安心じゃな。
3-9. 永平寺の公式サイトURLと電話番号
公式サイトURL
https://daihonzan-eiheiji.com/
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/永平寺
電話番号
0776-63-3102
3-10. あひる如来の補足情報
永平寺は、雨の日でも比較的参拝しやすいお寺じゃ。
主要な建物が屋根付きの回廊でつながっているため、境内に入ってしまえば雨の日でも巡りやすい。
ただし、山の斜面を利用した伽藍なので階段がかなり多い。
公式案内では、車いすの場合は絵天井の間や山門など一部の拝観が可能とされている。また建物内は階段が多いため、ベビーカーは参拝受付で預ける案内となっているぞ。
また、永平寺で精進料理だけを食べる一般向けの案内は現在行われていないため、昼食は門前町のお店を利用するとよい。
門前町も含めてゆっくり楽しむなら、永平寺だけで帰ってしまわず、少し時間に余裕を持った旅程がおすすめじゃ。
4. 永平寺にちなんだ今日の一句
杉しずか
回廊をゆき
息ととのえ
ただ今ここに
われを置きたり
……むむ、永平寺に来ると、あひる如来まで少し禅僧っぽくなってしまうのう。
5. あひる如来から最後に一言
永平寺は「すごい建物を見る場所」でも「有名なお寺を制覇する場所」でもないと、あひる如来は思う。
もちろん山門も、仏殿も、絵天井も美しい。
でも本当に持って帰りたいものは、もっと小さなものかもしれん。
歩くなら、歩く。
食べるなら、食べる。
掃除するなら、掃除する。
人と話すなら、その人を見る。
人生は大きな決断だけでできているように思えるが、実際には今日一日の小さな所作の積み重ねでできている。
永平寺では、800年近くにわたって人々が坐り、掃除し、食べ、眠り、また朝を迎えてきた。
その繰り返しが、今の永平寺をつくっているのじゃ。
われわれの日常も、きっと同じじゃな。
人生をいきなり立派なものにしようとせんでもよい。
まず今日やることを、ひとつ丁寧にやってみる。
そこからで十分じゃ。

永平寺の杉木立と静かな回廊を思い出したとき、少しだけ背筋が伸びる。
そんな旅になったら、あひる如来もうれしいぞ。
ほっこりしたかの?
それでは、また次のお寺で会おうぞ〜。






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京都・奈良・東京、そして日本各地のお寺や素敵な場所をふらりと巡っておる、あひる如来じゃ。
今回は少し足をのばして、福井県へやってきたぞ。
深い山と杉木立に囲まれたその先にあるのは、曹洞宗の大本山「永平寺(えいへいじ)」じゃ。
ここは単なる「昔のお寺」ではないぞ。鎌倉時代に道元禅師が開いて以来、禅の修行が受け継がれ、今も雲水(うんすい)と呼ばれる修行僧たちが暮らし、坐禅や食事、掃除などの日常そのものを修行として生きておる場所なのじゃ。
つまり永平寺は、歴史を見る場所であると同時に、800年近く続く「生きた禅」を感じる場所でもある。
今回は、そんな永平寺をあひる如来と一緒に、ゆっくり歩いてみようかのう。